メーカーインタビュー

消費者様・バイヤー様に選ばれる新しい食のブランド構築手法|株式会社ダイチ 代表取締役 佐藤勝郎さん

東北の『食』を取り巻く環境は、TPPをはじめ、農商工連携による六次化、安全・安心に関する消費者ニーズの高まりやライフスタイルの変革など、刻一刻と変化しつつある。

インターネットを通して日本全国から情報が溢れるなか、自社の商品をどうやってPRしたらよいのか? なにか差別化する手段はあるのか?

今回は、漢方和牛という独自の食肉ブランドを構築し、宮城発の新たな商品開発に取り組んでいる「株式会社ダイチ」の佐藤社長に、新しい食のブランド構築手法についてお話しを伺った。

業界の思い込みから抜けだした健康で美味しい牛肉つくり

弊社がメイン商品としている漢方和牛(かんぽうわぎゅう)は、「健康で美味しい牛肉を消費者に提供したい」という思いのもと、東北の黒毛和牛と九州の褐毛和牛を自然交配、自然分娩にこだわって生まれたブランドです。

一般的には高級な牛肉といえば霜降りというイメージが定着していますが、実は、霜降り牛をつくるためには、牛に無理に脂肪を付けさせる必要があり牛自体に負荷がかかります。
BSE問題をきっかけに、健康な牛を育て、食べる人が安心で健康になれる牛肉を提供したいという想いで、健康な牛づくりが始まりました。

牛の病気を防ぎ、内臓から健康になるよう14種類の漢方飼料を配合した上で与えました。これが弊社の牛肉つくりのスタートとなりました。

健康な牛を育む牧場

2年間の準備が全て消えてしまった 風評被害からの脱却を目指して

そんな中、事業の転換を余儀なくされる出来ことが起こりました。

私たち独自の、美味しくて健康な牛肉をコンセプトに、付加価値の高いギフト向け商品を2年間に渡って開発しておりました。ブランドの再構築から商標の手配、ブランドブックなど全て準備を行い、食品関連の大規模展示会であるスーパーマーケットトレードショーやギフトショー、さらには地方銀行様主催の展示会に出展し、デパート様やギフト大手様からの受注も固まってきたところでした。

ですがそんな時、2011年の東日本大震災が発生しました。
7月には福島の稲ワラからセシウムが検出され、風評被害により受注がすべてキャンセルとなってしまいました。これにより売上が半分に落ち込んでしまい、風評被害の払拭に東奔西走を余儀なくされました。

また一からのやり直しとなってしまったのです。

新たなブランド発信の牽引役となった優秀な営業マン、ブランドコンセプトブック

そんな中、東北の企業が集まる大規模商談会である「ビジネスマッチ東北」にて東経連さんと出会い、支援を受けることとなりました。やはり自社内で独自の取り組みだけでは限界があるということですね。

東経連ビジネスセンターさんのマーケティング支援プロデューサー 大志田典明さん、セールス支援プロデューサー 大平孝さんからブランド構築の手ほどきをいただき、商品開発のストーリーや特徴などブランド発信情報をブランドコンセプトブックとしてまとめることとなりました。

商談会や展示会において毎回商品をわかりやすくご紹介をするのは手間がかかることで、ブランドコンセプトブックをバイヤー様にお渡しすることで、これが可能になりました。このコンセプトブックは非常に出来が良く、他社メーカーも持ち帰る程で、まさに優秀な営業マンとなってブランドを発信してくれるようになりました。

ブランドコンセプトブックにあわせて包装やデザインを統一し、ブランドイメージも徐々に形付けられました。
まさにコンセプトブック様様です。これによって、弊社のつくる牛肉の世界観がバイヤー様に伝わり、徐々に浸透していったと思います。

バイヤーを納得させた商品特徴の裏付けの秘密

ブランドコンセプトブックにより、弊社が展開する牛肉の世界観は伝わるようになりました。
ですが、実際に取引につなげるには、「美味しい牛肉である」ということをバイヤー様にも消費者様にも伝えていかなければいけません。「霜降り」という名前や肉質を表す「等級」だけで売るのではなく、科学的なアプローチで裏付けができないか考えました。

そのため、宮城産業技術センターと連携し肉質や脂質を科学的に調査・分析することとしました。
分析結果では、赤身肉は不飽和脂肪酸が黒毛和牛よりも数段上で、脂肪が融ける温度は21.3℃と低く、脂肪が体内に残りにくいヘルシービーフであることが分かりました。また、人間の体に良いアミノ酸が黒毛和牛の1.5倍~3.5倍含まれており、口に入れた時にとろけるような食感である上質な肉であることが改めて数値データとして証明されたのです。

この数値データの裏付けが、バイヤー様に深い納得をもたらしてくれました。
1社漢方和牛のお取り扱いが決まると、バイヤー様やレストランシェフ様のなかで口コミが徐々に巻き起こりました。実際に漢方和牛を飼育している現場を見たいというご要望も多く頂戴するようになり、牧場見学への対応にも追われるようになりました。嬉しい悲鳴ですね。

美味しい牛肉、健康によい牛肉を消費者様に食べてもらうため、健康な牛を漢方で育てる。その美味しさを数値データとして裏付けし、ブランドコンセプトブックで世界観を伝える。その価値を知ってもらう人がメインのお客様になる。

牛肉業界の慣習とは違ったアプローチなのかもしれませんが、自然な育て方にこだわり、試行錯誤した結果が、徐々に実を結び始めました。今では、弊社の漢方和牛に惚れ込んでもらい、大阪の飲食店様で漢方和牛専門の焼肉屋さんができるなど、当初は思ってもみない販路の広がりが生まれました。

裏付けのある説明により、漢方和牛の価値・世界観が伝わりました

「価値を知っている方に買ってもらう」それが中小企業の生きる道

このような経験から、これからは自分たちが「どういう人に食べてもらいたいか?」という明確なビジョンを持つ必要があると感じました。間口を広げすぎてしまうとコンセプトがぶれてしまいます。間口を広げるのではなく、価値を知っている方に買ってもらう。それが中小企業の生きる道なのではないでしょうか。

この基本戦略は、インターネットを活用してさらに強化されます。
バイヤー様やシェフ様がインターネット検索で自社ウェブサイトや東経連さんのマッチングサイト「東北いいネット」にたどり着き、お問い合わせにつながっています。バイヤー様やシェフ様の目に触れる機会を設けることはとても大事であると感じています。

しかも、経済団体である東経連さんのウェブサイトに掲載いただくことで、バイヤー様への信頼感アップにも繋がっていました。目には見えないのですが、商品価値を高めてくれています。

これからも、コツコツ積み上げてきた自社ブランドをしっかり守り、価値を知っている方へのPRと価値創造を続けて行きたいと考えています。

間口を広げるのではなく、「価値を知っている方に買ってもらう。」